コラム
不動産投資をはじめよう!~不動産特定共同事業の仕組を知ろう~
目次
スマートフォンやパソコンから簡単に申し込み、運用ができる不動産投資商品。これらは、多くの投資家から出資を募り、不動産を取得し、その不動産から得られる収益を分配するという仕組みで運用されます。前回の記事では、不動産特定共同事業という許可が必要であることを紹介しましたが、今回はその許可がどのような基準で与えられるのかを詳しく解説します。
不動産特定共同事業の許可とは?
不動産特定共同事業は、投資家から資金を募って不動産を取得し、その運用利益を分配するビジネスモデルです。この事業を行うには「不動産特定共同事業法」に基づく許可が必要で、許可を得るためには厳しい基準を満たさなければなりません。
許可申請は、事業者の本店所在地や事業の規模に応じて、以下のように所管の知事または国土交通大臣に申請します。
・本店が東京都、支店が愛知県の両拠点にて事業を行う場合、または特例事業を行う事業者
⇒ 国土交通大臣の許可が必要
・本店が大阪で、大阪のみで事業を行う場合
⇒ 大阪府知事の許可が必要
許可の標記例は以下の通りです。
・国土交通大臣の許可を得た場合:不動産特定共同事業許可 金融庁長官・国土交通大臣第〇〇〇号
・都道府県知事の許可を得た場合:不動産特定共同事業許可 大阪府知事第〇〇号
なお、この許可の前提として、宅地建物取引業の許可も必要です。
不動産特定共同事業の許可基準とは?
不動産特定共同事業の許可を取得するためには、事業者は以下の基準を満たす必要があります。
・宅地建物取引業者であり、法人として3年以上事業を行っていること
・資本金が1億円以上であること
・直近3年間の決算が黒字であり、今後の見込みも良好であること
・決算が監査法人や公認会計士による監査を受けていること
・監督官庁から認可を受けた約款に基づく契約を締結すること
これらの厳しい条件をクリアした事業者のみが、不動産特定共同事業を行うことができるのです。
全国の不動産特定共同事業者数の現状
参考までに、全国には約10万社以上の宅地建物取引業者がありますが、そのうち資本金が2千万円未満の法人が約80%を占めます。そのため、資本金1億円以上の不動産特定共同事業の許可を得る業者は少数に限られています。
令和2年9月30日時点で、不動産特定共同事業の許可を取得している業者数は全国で165社に過ぎません。その中でも、電子取引業務(クラウドファンディング)を扱える業者はわずか35社程度となっています。こうした状況からも、許可を得ることがいかに厳しいかが分かります。
許可取得までの道のりと必要な準備
不動産特定共同事業を開始しようとする宅地建物取引業者は、まず監督官庁への相談からスタートし、許可取得までには1年近くかかることがあります。その間に、各種規程集の作成や、業務の方法を整備するなど、多くの提出書類が必要となります。許可を取得するためには、多岐にわたる準備が必要であり、途中で計画を断念する事業者も少なくありません。
また、クラウドファンディング型の電子取引業務を行う場合、プライバシーマークやISO/IEC27001、JISQ15001などの取得が求められ、個人情報保護やセキュリティ管理の水準を高める必要があります。
不動産特定共同事業の透明性と安心感
不動産特定共同事業は、他の金融商品と比較しても非常に高い透明性を持つと言われています。事業者は、毎年監督官庁に事業報告を行い、また出資者に対しても財産管理報告書を開示する義務があります。これにより、投資家は常に自分の資金がどのように運用されているかを確認することができ、安心して資産運用に参加できます。
これからの不動産投資商品とクラウドファンディングの注目
今後、資産運用の重要性がますます高まる中で、不動産特定共同事業に基づく不動産投資商品はさらに注目されることでしょう。特に、電子取引型のクラウドファンディングは、投資のハードルが低く、多くの人々にとって魅力的な選択肢となっています。これから不動産投資を始めたい方には、この分野での知識を深めることが成功の鍵となるでしょう。
まとめ
不動産特定共同事業は、厳しい基準を満たした事業者だけが許可される事業であり、その透明性と信頼性が高く評価されています。スマートフォンやパソコンを通じて少額から投資できる不動産投資商品は、特にクラウドファンディング型の商品として人気が高まっています。これから資産運用を考えている方にとって、不動産特定共同事業に基づく投資商品は、確かな選択肢となることでしょう。